その780 勲章!
俺の後頭部には大きな傷がある。
逃げるとき受けた傷じゃない。
後ろから構わずに椅子で殴られた傷だ。
背中にあるのは卑怯傷と言われるけれど、
そんなことばかりではない。
2~3人で掛かって来られると防ぎきれない傷もあるってことだ。
が、ここ30年ほどは傷つくことはないし、傷をつけた覚えもない。
素手の勝負であれば殆んど傷は早々に治るし、
大怪我になるほどの傷を負わさないのが喧嘩のルールだ。
今ではそんなルールもないに等しいがね。
ルアーの傷も同様で、バスとのファイトだけなら、
それほど酷い傷はつかないのだが、
アメリカナマズの猛烈ファイトはチト怖い。
同時にミスキャストでコンクリートに激突、
或いは鉄杭に弾かれるなどの傷はちょいと厳しい。
が、ルアーの傷は勲章だ。
クンクリートと格闘して、鉄杭と殴り合って・・・。
そんな誇り高きファイトの痕跡である。
だから、傷が付いたからって二軍落ちにしちゃあ可哀想だぜ。
傷の一つひとつが、自分が上達して行く過程のものだからだ。
そんな傷を眺めつつ、思い出話に花が咲く。
そんな傷に触れながら、チビリチビリと酒を飲む。
ああ、今夜の酒は心に沁みる。
楽しい思い出を脳裏に浮かべ、投げられぬ思いを心に広げる。
ああ、釣りがしてぇなぁ。
さらなる勲章を増やしてぇなぁ。
秋の夜は何故か長い・・・心に闇が広がる前に、釣りに行こう!