その171 命あるもの
相変わらず湖岸には死魚が捨ててある。
それをカラスやトビ、セキレイなどの鳥類が食う。
が、食いきれない部分は残す。
そこに蛆がわく。
この時期ならものの数日で蝿がたかって蛆がわく。
湖岸のコンクリート平場に蛆が蠢く様を見るのはおぞましい。
ものの哀れが身にしみる。
「命を軽んじるなよ、オッサン!」ともの申したいが、
車でぶつけられたり、ナイフで刺されるのも嫌なので、
最近は注意をしないようにしている。
でもね、心の中で思うことがある。
「本物の釣り人は、けっして必要以上に魚を殺さないもんだ。
そこには、魚と命や生活を分かち合った、釣り本来の姿があるからだっ」。
と、ブツクサと念じながら、
捨て去られたアメリカナマズやブルーギルを片付けている。
俺のそんな思いを知る由もなく、
相変わらず湖岸にはアメリカナマズやブルーギル、
ニゴイ、ヌマチチブなどの不用な魚が捨てられている。
「釣れたことに感謝……」なんてぇことは言わないが、
小さな命を守ることは人として当たり前の行為だと思う。
そんな人として、俺は生きて行こうと思っている。