WBSプロクラシッ23プレスアングラーレポート
清水 綾選手
■初日
多くのWBS選手同様仕事を持つ身の清水選手は、仕事の都合によって、台風18号が通過した後の霞ヶ浦には出られなかったという。
ちなみにこのときの台風で水位が70cm近くあがったという話を聞いた。
普段、条件のいいアシの場合、30~40cm程度の水深からでも魚がHITしてくる霞ヶ浦にとって魚の動きを極めて予測し難いものとする状況変化といえる。
そうした背景もあったのだろう。清水選手は朝の集合後にプラクティス的な動きをしていくと打ち明けてくれた。
最初に入ったのは、石積みやアシ、杭が散在する東岸。
霞ヶ浦全体の中でも中流域にあたるシャロ―エリアだった。
まずはベジテーションまわりを小一時間あまり撃ち続けて生命反応が返ってくることはなく移動。
その後もしばらくは、アシ、石積みといった霞ヶ浦東岸特有のいかにもベイトが絡みそうなエリアをスピナーベイトやクランクなどのファーストムービング系ルアーと2.6gシンカーと重ためにセットしたネコリグを交互に打ち続けていく。
しかし、エリアが間違っているのか、ルアーの選択に問題があるのか。
バイトを得ることがないまま、「干拓」といわれるエリアを越え、霞ヶ浦本湖全体からみて、下流エリアへと移動距離を伸ばしていく。
横の動きと縦の動きを織り交ぜながら、徐々に南下していく途中で一旦東岸を離れ西岸へ。
東寄りの風が強まる中、風が強く吹き付ける西岸の中にあって、数少ない風裏を形成する和田ワンドへ。
霞ヶ浦全体の中でも、その回り込んだ地形によって、冬場でも比較的温暖な環境が維持されるエリアだ。またバスが好むようなストラクチャーも豊富で、ここでも杭、ベジテーション、沈船などを、時間をかけて撃っていくが、バスの反応を得ることはできなかった。
想像していた以上に厳しい状況に思われる。
そして再び東岸エリアへ。
地図上でみるだけでも水通しのよさを感じられる天王崎といわれるエリアだ。
この時点ですでに時間は9:00を経過。
そしてこの場所ではじめて魚からのコンタクトがネコリグに。しかし、消波ブロックの隙間に落とし込んだラインはコンクリートの地肌との摩擦にもろくも敗れ、魚の姿をみることはできなかった。
スタートから3時間以上を経過してやっと出たバイト。
悔しさもあるものの、魚の反応があったことに清水選手は微かな希望を感じたようだった。
そして、霞ヶ浦でも屈指のマンメイドストラクチャー、牛堀の沖テトラに入る。
ここはショアラインから200メートルほど離れた沖に設置された消波用ブロック帯で、100メートルほどの長さに積まれた消波ブロックが合計7つ並んでいる、通年魚をストックする巨大なエリアだ。
先のバイトからヒントを得て、この地を選んだと思われるが、霞ヶ浦においてここは定番中の定番ともいわれるエリアでもあり、プレッシャーも相当高い。
この日もWBSプロクラシック出場選手はもちろんのこと、一般アングラーのボートも多く出入りしていた。
しかしそんなネガティブな要素に集中力を乱されることもなく、淡々とネコリグを落としていく清水選手。そして、撃ちはじめて3つめのブロックを過ぎようとしたとき、待望のバイト。体長は小ぶりながらも肉付のいいグッドコンディションのバスをキャッチできた。
そしてその10分後には、1kgと500g弱ほどのバスを連続キャッチ。
「今日はここで粘るか?」そんな声ももらすが、その後1時間経過してバイトが完全に遠くなると、エリアに固執することなく、来た道を帰るように北上。
途中立ち寄ったアシのシェードから600gほどの魚を引きずりだし、最後の勝負に西岸に位置する浚渫エリアへ移動するがキャットフィッシュがHITするだけにとどまり、初日を4フィッシュ&4アライヴの2750g、6位で終えた。
■2日目
初日のスタート順とは逆の順番でスタートするWBS。
初日18番手スタートだった清水選手は、2日目、全21艇中4番手スタートとなる。
初日の東寄りの強い風とはうって変わって風は収まり、穏やかな天候になるとの予報もでていたこの日。最初に向かったのは西岸の浚渫エリアだった。
初日は風の影響から東岸をセレクトしたが、2日目は風も穏やかだったということでここをセレクト。
話を聞くと台風18号が来る少し前のプラクティスで複数バイトがあったのだという。
ただそのとき、清水選手はちょっとした転倒事故で腕を負傷しており、まともなフッキングができず魚はキャッチできなかったのだそうだ。
(実はその影響で普段は左手持ち右巻きのスタイルなのだが、リールをかき集めすべてのタックルを右手持ち、左巻きに変更してきていた)
フッキングができていないのなら、まだそこに魚はいる。
それにそのときの魚はいなくても、新しい魚が入ってきている。
そう信じての決断だった。
しかし清水選手にとってこれは裏目にでてしまう。
朝の段階で1時間弱粘るもののノーバイト。一旦、初日に3本のバスをキャッチした消波ブロック帯へ移動して1kg超のバスと500g弱ほどのバスをキャッチし、風向きの変わり目を読んで、再度浚渫エリアにもどってくるが、そこでもやはりノーバイト。
結局この日、3時間以上も浚渫エリアに時間を費やすが、バスから反応を得ることはなかった。
そして時間は12:30。
初日は14:30の帰着だったが、2日目は表彰式の関係から13:30の帰着オーダーとなっている。釣りができる時間は実測でも40分程度しかない。
そんなときに僕の頭をよぎったのが2012年のバサー・オールスタークラシックにおける
清水盛三選手のあの名言、「12時までゼロやってん」だ。
最後まであきらめなければ何が起こるかわからないのが、バスフィッシングトーナメント。
WBSの清水選手が僕と同じようにあの名言を思い出したかはわからない。
しかし残り時間をわずかにしたこのタイミングで、
近年、霞ヶ浦で多く新設されている消波用石積みエリアへ移動し、これまでバイトが出なかったクランクベイトを手にすると、待望のHIT。
わずか30分の間に2本のバスをキャッチに成功したのだ。
そして初日のウエイトを上回る3220g(4フィッシュ4アライヴ)で2日目をウェイインすることができた。
全21選手中、2日間ともにリミットメイク(合計10尾)をしたのが優勝した草深選手だけという、スーパータフコンディションの中で、2日間8フィッシュをキャッチし、トータルウエイトを5970gとして3位入賞を果たすことができた。
近年まれにみる大増水と、その水を抜くために水門を開放し1日で30cm近く減水するという、タイダルリバー並みのコンディションだった霞ヶ浦。
一般アングラーを含めた多数のエリアバッティング、バラシによる精神的ダメージなど、数々のネガティブな要素に対しても言い訳のような言葉を漏らすこともなく淡々と釣りつづけた清水選手のその姿勢があったからこその結果だと思う。
1本1本の積み重ねが結果につながることを、改めて感じさせてもらえる試合だった。
もちろん他の選手にも同様以上のマインドはあるだろう。
しかしわずかな差が勝敗を決するのが勝負事なのだ。それは言葉で明確にできるような差ではない。だからこそそれを現場で身をもって感じられるのが、プレス同船の面白さなのだとも思う。
そのような場を創造し、今回プレスとしての機会を与えてくれた清水選手他、出場選手のみなさん、そしてWBSのスタッフ、スポンサー各社様に感謝です。ありがとうございました。
今年、悔しさを募らせた選手がまた来年、どんな試合を見せてくれるのか、楽しみにしたいと思います。
■プレスアングラー:竹内 聡