その198 生きとし生けるもの
ブ~ン、ブ~ン、ブ~ン。
釣りをしているすぐ後ろで蜂の羽音がうるさかった。
巣でもあるのかな?
と思って振り返ったが何もなかった。
気のせいか!
そう思って再び釣りを始めると、
またしても背後からブ~ン、ブ~ン、ブ~ンが。
羽音のする方をよくよく見ると、
緑色の物体を蜂が抱えていた。
なんだろう?
不思議発見・・・・・・好奇心旺盛な俺は蜂の羽音のする方へと寄って行った。
で、よくよく見ると、一頭の蜂がキリギリスを捕まえていた。
そして、盛んにお尻の針を刺していたのである。
キリギリスが暴れるものだから、
何回か刺して毒を注入すると、一旦離れて今度は別の場所に刺していた。
何だか痛そうだが、俺が刺されている訳ではないので、一安心である。
釣りをそっちのけで観察を続けていると、
蜂はキリギリスの頭のすぐ下辺りを狙って刺していた。
そのうちキリギリスは、ぐったりとなった。
キリギリスがぐったりとして弱ると、
蜂は獲物を抱きかかえて飛んで行った。
巣に戻って食糧にするのだろう。
子どもがいるのかな? それとも女王様かな?
いずれにしても、食料を狩って暮らしているのだ。
彼等は無駄には殺さない。
無駄に無慈悲に生き物を殺すのは、人間だけである。
たった一つの命を無駄にするなッ。
巷には魚殺しだけではなく、人殺しも溢れている。