罵州雑言

罵州雑言

その240 「釣り人による釣り場環境保全のための草の根運動、20年目に向けて!」


 

第37回霞ヶ浦クリーン大作戦「53 Pick Up!・秋の陣」を終えて思うこと。

 

●霞ヶ浦で始まったゴミ拾い。

霞ヶ浦でバスアングラーによる清掃活動「53 Pick Up!」が始まったのは、

1995年の2月でした。

その後、夏の陣、冬の陣と称して年二回の清掃活動を行っていました。

さらに、2009年から夏場の熱中症対策のために、

開催期日を春と秋に変更しました。

 

1995年当時、私たちが普段利用させて貰っていた土浦新港の荒廃は酷く、

人間やペットの排泄物、弁当屑などの他、

家電製品や廃車を含めた不法投棄物だらけでした。

さらにコンビニエンス・ストアーやファースト・フード店の出店で、

ゴミは益々増えました。

 

加えて、バス釣りブームの大きな波が押し寄せ、

釣り場には急ごしらえの釣り人たちが溢れました。

タバコのポイ捨ては云うに及ばず、車の窓からいとも簡単に

弁当の屑や空き缶などを投げ捨てていました。

 

それまで、ほんの数人が秘かに楽しんでいた釣り場に、

何千、何万という単位の人が訪れたのですから、

釣り場はアッと云う間にゴミだらけになりました。

 

バス釣りを通じて、釣りという楽しみを持つのはとても素敵で、

人生においても大切なことだと思います。

しかし、急激なファンの拡大によって、

釣り場の管理や釣り人へのマナーの周知が、

後手に回ってしまったのは事実です。

 

釣り人をこのまま野放しにしてはいけない。

しっかりと管理したり、指導する人がいなければ、

野放図な釣り人ばかりになってしまう。

また、釣り場を管理する人がいなければ、

無秩序な釣り場ばかりになってしまう。

 

そんな思いから、バス釣り人による釣り場の清掃を始めました。

『自分たちの釣り場は自分たちが守る』というのが、

私たちの基本姿勢です。

 

 

●ゴミ拾いを楽しむ・・・と言う考え。

私たちが行う水辺の清掃活動「53 Pick Up!」は、

今までのゴミ拾いとちょっと違っています。

私たちのゴミ拾いに参加するには、

公共の場の清掃と言う奉仕活動でありながら、

参加費が必要なのです。

これは、釣り場から拾い集めたゴミを処理するのに、

莫大な費用が必要であることを、参加者に知って欲しいからです。

 

毎回、「53 Pick Up!」で回収されるゴミの処理費用には、

少なくて10万円、多い時には30万円ほども掛かります。

不燃と可燃の分別をしないのと、

リサイクル家電や車のバッテリー、古タイヤなど、

ありとあらゆるゴミの一切合切の処理費用ですから、

ゴミの処理費はキロあたり90円ほどの高額になるのです。

 

ちなみに、しっかりと分別すると、

キロ単価は15~20円ほど(土浦市調べ)ですが、

水に浸かりドブ泥になっているゴミを分別するのは大変な作業です。

また、ペットボトルやアルミ缶などの資源ゴミが、

資源として引き取って貰えないのも実状です。

 

そして、水辺のゴミを拾うことで、

釣り場のゴミの多くが釣り人由来ではなく、

流域住民による不法投棄であることが理解できます。

つまり、霞ヶ浦など水辺のゴミのほとんどは、

その流域に住み、その水を飲んでいる人々が排出したゴミなのです。

 

概ね一人が霞ヶ浦から拾い上げるゴミの量は8~10キロです。

参加者からもらう参加費は一人千円です。

つまり、参加費はゴミの処理費用と傷害保険料を捻出するだけで、

アップアップ状態なのです。

厳しいことを言えば、参加者が増えれば増えるほど、

ゴミ処理費用は不足するのが現状です。

 

しかし、「参加費を取るのだから、楽しみも必要だね」と云うことで、

ゴミ拾いの終了後に様々なイベントを開いています。

このイベントの費用や賞品は、

清掃活動を支援応援してくださるスポンサーの皆様のご協力によって、

賄われております。

 

最初は大きな赤字であっても、みんなで頑張り続けると、

いろいろなことが上手く回り始めます。

でも、赤字を覚悟で頑張れるのは、

私たちバス釣り人が

「ゴミのない美しい霞ヶ浦でバス釣りを楽しみたい!」、

そして「この楽しみを自分の子供たちにも伝えたい!」

と願っているからです。

 

私たちは霞ヶ浦の清掃活動を単なるゴミ拾いとしてではなく、

釣り人の交流の場や釣り場を守る人の集まりになればと考えています。

さらに、人と人、地域と地域の相互交流や理解に役立つと考えます。

こう考えることで水辺の清掃活動は、釣り人だけではなく、

霞ヶ浦を愛する全ての人が分け隔てなく同席できる場になるからです。

 

悲観的なことなのですが、水辺からゴミがなくなるのは、

この先何十年もかかることでしょう。

しかし、水辺にゴミを捨てない人や持ち込まない人、

そして捨てられたゴミを拾い上げる人を増やして行くのは可能です。

 

私たちの活動は、

「釣り場に対して何ができるか?」

「どうすればよいのか?」などを立ち止まって考えるのではなく、

釣り場に対して自分たちのできることを直ちに実行するだけなのです。

 

 

●全国で・・・

霞ヶ浦での開催から19年を迎えて、

「53 Pick Up!」は日本各地の水辺でも開催されています。

嬉しいことは、すべての地域がバスアングラーの自発的な行動によって、

釣り場の清掃活動が始まったことです。

 

全国のバスアングラーが、

「53 Pick Up!」と言う活動に耳を傾け、目を向け始めています。

『自らの釣り場は、自らの手で守る』という自意識を持ち始めているのです。

釣り場はバスアングラーの唯一無二の財産であると言う意識が、

少しずつ広がり始めたのです。

 

全国の河川や湖沼、海など水辺での清掃活動には、

必ず危険が伴います。

しかし、日頃からマナーやルールを遵守し、

魚釣りで鍛えた腕前は伊達ではありません。

安全と安心を最優先にして、今後も水辺の清掃活動は続けられて行きます。

未来により良い釣り場を残し、

常識と行動力を備えたアングラーを育てるために・・・・・・。

 

 ともに手を携えて頑張りましょう!

 

文責:吉田幸二

 

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