罵州雑言

罵州雑言

その443 故郷が二つあるって、いいもんだ!


 

 

あれほど夏が好きだったのに、今では好きじゃない。

学生の頃は夏休みが待ち遠しかった。

俺の実家は商売屋だったので、何って予定があった訳じゃない。

けれど、夏休みは好きだったなぁ。

ただ単に学校や勉強が嫌いだったのだろうなぁ。

 

近所の大塚公園に移動図書館が来ていたっけ。

木陰に茣蓙を敷いてその上で寝そべって本が読めた。

家ではまず無理だった。

寝そべって本など読んでいたら、

お袋や姉貴たちに小言を言われたからだ。

「本を読む姿勢じゃない!」ってね。

 

公園の中の木々を抜けてくる風は冷風扇の風の様で、

心地が良かった。

読みながらついついウトウトすることしばしばだった。

知らないうちに優しいおばちゃんがタオルをかけてくれた。

こんなお袋がいいなぁ……罰の当たる様な事を思った。

 

そうこうしているうちに遊び仲間がやって来て、

グラウンドで鬼ごっこや三角ベースが始まる。

汗まみれになって遊んだ後は、公園の水飲み場で水を飲んだり、

仲間と水をかけ合ったりしてびしょ濡れになった。

 

びしょ濡れになったついでに、

公園の池に入って魚たちを追いかけた。

衣服や靴を履いたまま、上から下までずぶ濡れだった。

お袋の怖い顔がまぶたに浮かんだが、

怖さよりも楽しさの方が優先された。

 

ここ数日の暑さの中で、

そんな子供の頃の夏を思い出している俺がいた。

 

 

443tsukubasan

 

今は目の前に霞ヶ浦があって、彼方には筑波山がそびえ立つ。

ここは茨城、第二の故郷。

 

 

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