その462 幼きあの日の魚釣り
夏の焼ける様な日射しを受けて、朝から昼までウキを見つめていた。
来たる8月29日に開催する子ども釣り教室用の魚集めだ。
麦わら帽子を被り、首にタオルを巻き、
延べ竿とバケツを持って、
霞ヶ浦のぐるりを囲む堤脚水路で小物釣りだ。
目の前に蓮田があるので、いつ雨が降っても大丈夫。
ハスの葉っぱが傘の代わりになるからね。
ゆっくりと流れるウキを見つめていると、
半世紀ほどタイムスリップして、
小学生の頃に戻ったような気になる。
いいなぁ、魚釣りって。
釣り場にいると、いつでも子どもに戻れるからだ。
同時にいつまでも子どものままでいられる。
大人になれない大人とか、子どものままの大人とか蔑まされても、
俺は一向に気にしない。
好奇心が旺盛で、すべてにチャレンジする子どものままが良い。
目の前に大きなハスの花が開いていた。
この花の見頃はこれが最後だろう。
やがて、すぐ横にある花のように結実して行くのだろう。
ハスと言えば、俺たちはその実を「アッチッチィ玉」と呼んでいた。
実が硬くてコンクリートで擦っても削れないほどだ。
で、擦って熱くなった実を友達に押し当てるのが流行った。
友達は「アッチィ!」と言って跳び跳ねる。
それがきっかけで鬼ごっこが始まるのである。
ウキを見つめているといろんなことが思い出される。
幼きあの日に帰れるんだな。
霞ヶ浦のぐるりを囲む堤脚水路での魚釣りには、
そんなタイムマシーン的な要素があって、
俺に暫しのタイムスリップを経験させてくれる。
戦後70年……俺、64歳。
戦争を知らない子どもたちさぁ~。