2007W.B.S.プロクラシック16


狩野 敦 プレスアングラーレポート 池田昌信

今年で、第16回目となるW.B.S.プロクラシックが10月27日28日開催された。
前日から降り続いた雨はそれまでの残暑を吹き消すかのように
冬の訪れを一気に加速させる程の低温になり、
しかも、スタートに近づくほどに強く降り始めた。
真冬支度+レインウェアーで万全の体制をとりつつ、
23名のエントリー選手の名前を告げられるのをじっと待っていた。
松村事務局長に「池田さんのプレスするプロアングラーは狩野敦選手です」
おぉぅおぉ! 年間ランキング12位、出場回数8回目、
つわもの中のつわもの狩野選手のプレスかぁ!
初めてプレス経験したときから“MCの狩野”と異名をとることで(笑)
非常に注目していた選手である。



また、選手のプロフィールに 
【職業】家事手伝い
【座右の銘 好きな言葉】 
人生 楽ありゃ 苦もあるさー 後から来たのに追い越されー。

なーんて非常にお茶目な面も伺わせる狩野選手の
2日間の釣り三昧をトクと拝見することにしよう。

●初日
横山会長の挨拶から始まり、松村事務局長の諸注意事項、
特に「選手たちはプレスの方の名前をなかなか覚えてくれません。
気にしないでください」というくだりは、毎回聞いていて笑える。

狩野選手に挨拶をし、バレット20ftに乗り込む。
ボートがスロープから下ろされ、早速名前を間違エラレマシタァ!
なんとユーモアのセンスがあるセンス…もとい選手なんでしょう。
「今回のプランは?」の問いに「Big Oneしか狙っていないよ!」と
謎めいた微笑み(?)を浮かべ、
しかしその言葉は確信のあるプラを重ねてきた証拠でもあると理解した。
ジェイソン風のマスクと料理の時に使用するホットプレート用の
ビッググローブをはめて、なんてお茶目なんだろう。

18番スタートと遅まきながら、「雨も降っているし、ゆっくり行くよ」
と言った舌が乾かぬうちに猛スピードでかっ飛ばされ、
シングルコンソールのため、
銀球鉄砲で撃たれているかのような(わかるかなぁ?)
雨粒で前は全然見えず、
横目で確認しただけでも2〜3艇はごぼう抜きしてましたぁ。

どのくらい走ったのか、景色も見えず
ただひたすら下を向いて飛ばされないようにシートにしがみつき、
バチバチ当たる雨粒に耐え、息も絶え絶えになった頃、
ようやくファーストポイントに到着。
長かったなぁ。何処だここは?

どうやら洲の野原の手前にある水門らしい。
そぼ降る雨の中、鉄板が打ち込んである際に、
パドルテールワームのダウンショットを丁寧に撃ち込んでいく。
バイトが1回あったものの、バスからの反応はなし。
少し移動して、葦際の乱杭とブレークがある場所で待望のキーパーをゲット!



その後粘るも、反応がなく移動する事に。
段々とレインウェアーに雨が染み込んで来て、
寒さが増して「熱燗もってくればよかったなぁ」のジョークにすかさず、
「いいですねぇ、わたしにも少し分けてください」
なんてリラックスした会話が帰ってくる。

北利根川まで突っ走り、プラでも感触の合ったホームポイントに到着。
「ここからはクランクと心中します」
そう言ってディープクランクをセットしたグラスロッドを手に
岸際へボートをうまく操船しながら撃っていく。
相変わらず降り続けている雨だが、水温はそれ程下がっておらず、
生暖かい感じがした。午前9時、待望の2本目のキーパーをキャッチ。



「ここは、もっとでかいのが釣れる筈なんだけど?」と、
納得がいかない様子にバウを立て直し、再度初めから流しなおす。
すると、で、でたぁ! ガツンの当たりにロッドが弧を描がいたぁ!
キロアップのナイスサイズのバスに思わず興奮して
寒さで縮こまっていたせいもあり、ちびりそうになってしまった。



慌ててデジカメのシャッターを切るも雨まみれで、使用不能に…。
こんな時でも、お茶目な狩野プロは
「魚だけ撮って、景色が入るとポイントが判っちゃうから」なんて冷静なのか、
ジョークなのか判断がつかない様な事をニヒルな口元から発する。
「いたねぇ。まだいるかなぁ?」などと
2匹目のドジョウを期待しつつ、再々度流しなおす。
するとどうでしょう!またしてもんずごーんとロッドがまがり
サイズアップのこれまたキロアップのナイスバスをゲット!



結局ホームポイントで3本のバスをゲットし、合計重量が3キロを越えた。
これはひょっとするといい線いっちゃうかも〜と一気にテンションが上昇し、
レインウェアーのフードから湯気が上がらんばかりのヒートアップ!

しかーし、ここから突然バスからの反応がなくなり、
11時まで粘るも、ついにあきらめ、ポイントを移動。
真珠棚の柵を執拗に攻めるもまったくの無反応。
帰着時間も迫り、境川手前の近所で時間を気にしつつ、
撃ち続けるも、追加することは出来なかった。
ぐしょぐしょになりながら、MC風太郎氏の傘も
お猪口になりそうな横殴りの雨の中いざウェイン。
なんと3330gをマークし、初日7位で好位置をキープ。



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夕方からは恒例のパーティーが霞ヶ浦CANKOHホテルで開催された。
外の雨風は益々強くなり、翌日の試合が危ぶまれたが、
各テーブルでの懇親は何処吹く風で大盛り上がり、
スポンサーからの賞品提供、霞おやじ様から選手への愛情ある叱咤激励。
蛯原選手のアメリカトーナメント遠征の話と
盛りだくさんの内容にあっという間に時間が過ぎ、
このまま朝まで、語りつくそうかと個人的には思ったが、
後ろ髪を引かれる思いで、泣く泣くお開き。
ま、明日も頑張らねばならないので、
濡れた衣服を車中で乾かしながら、眠れぬ夜をすごした。



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●2日目



目覚ましのアラームで目を覚ますとあらーっ。 
昨日とうって変わり、なんと台風一過の雲ひとつ無い晴天になってましたぁ。
初日とは逆の順で6番目に新港をスタート。



鏡を張ったような湖面をまるで競艇選手の用に何艇も追い越し、
日の出がまぶしく、富士山がくっきり映ったその景色は、
思わず誰もがシャッターを押したくなる、最高の瞬間であった。



誰もいない大山の桟橋に到着。ダウンショットを撃つと数10分でバイト。
がしかし、抜きあげる際にばれてしまった。
「ノンキーだったね。」なんて苦笑しつつも、
初めのばらしは不吉な予感が。
後日談だが、某氏とペアーを組んだとき彼は「ばらしたら土下座しろ」なんて
言ったとか言わなかったとか。

反応がなくなったのでその奥の護岸を攻める事に。
「ここは、ひと流しで2、3本はとれる」と言いながらスムーズに撃ち続けるも、
昨日の雨により水位が上がり、バスからの反応が無い。
「水位が上がると釣れないんだよなぁ」と柄にも無い弱気発言が。

一通り流して、昨日爆釣したホームポイントへ加速。
しかし、別のトーナメントの船がごったかえしていて思案したが、
スタート前に切り上げる作戦でポイントへ入るも、
先行者あり、移動するのをじっと待って、いざディープクランクを撃つ。
しかし、何かが違う。バスからの反応が無い。
水位が上がった分モアディープなレンジのクランクに交換した瞬間、
昨日と同じポイントで待望のバイト。
が、しかし、巻き上げ寸前のボートの真下で食ってきたため、
ロッドを返した瞬間、悲劇が起きてしまった。
ゆうにキロアップの魚を逃してしまった。
呆然と立ちすくみ、放心状態が悔しさを倍増させた。
諦めきれずに何回となく往復するも、
それっきり、これっきり、もう、これっきりですかー?

他のボートが続々上っていく中、バウを北浦へ向けて突っ走る。
数艇の選手がドックまわりに詰め掛けていた。
中に割って入ってやらせてもらうも、1バイトのみで魚の顔は見られなかった。
迫り来る時間に戻りつつも、途中岩盤ポイントにマーカーを投げ、
「出ればでかいよ」とヘビキャロ、スピナベとローテーションしながら
撃ち続けるもまったくバスからの反応が無い。
もはやこれまでかぁ。

狩野選手の顔色を恐る恐る伺うと、
意に反して、今日の天気のようにカラっとした爽快な笑顔で
自分の釣りをやり切った充実感に溢れている様だった。
結局この日はバスを手にする事ができなかったが、
帰着して、ウェインを待つ間にも、その茶目っ気はとどまる事を知らず、
空のウェインバックに水をたっぷり入れ、
いかにも魚がいるように皆をハラハラドキドキさせ、
ジェイソンのマスクで壇上に上がるその勇姿は、
MC風太郎氏も真っ青。
悔し顔を見せたくない、オトコの心意気を垣間見たようでした。



本当にバスフィッシングライフを楽しんでるなぁと
実感させてくれた狩野選手に、
心から拍手を送りたいと思います。
ありがとうございました。