減水上等!
それでもW.B.S.選手は釣ってくる!
How they managed low water.
W.B.S.プロトーナメントシリーズは2017年、例年と比べて若干スケジュールが変わった。
5月にトーナメントが組まれていないのである。
魚の個体を保護するという志の高い姿勢から生み出された措置で、この考えは他団体や一般アングラーにも共感され、5月はライブウェル使用率が激減したという。魚あってのスポーツゆえ、こうした対策は地道に続けて行かなければならないと思う。
だから、6月の第三戦は実に久しぶりという印象だった。
6月11日、土浦新港に馳せ参じた30チーム60名のアングラーもそう感じたに違いない。
初戦のような高ぶりが各選手から伺えたのである。
みんな、おあずけを喰らった幼児のように、待ち遠しかった獲物につんのめって飛び付いたのである。
朝日に向かってのスタート、パートナーと協力し合って釣果を求め、栄光のウェイインロードを歩む。このW.B.S.トーナメントの魅力を選手は2か月ぶりに味わった。
しかし、状況は芳しくなかった。
梅雨入り宣言が下されたにもかかわらず、まったく雨が降らない霞ケ浦は大減水。
山本五十六は大元帥だが、霞の大減水はシャレにならない。
マッディシャローレイクの釣りを得意とする選手が多いW.B.S.にあっては、強烈なディスアドバンテージ。多くの選手がプラの時点でシャローの激浅振りに驚いたのである。ショアーラインは狭められ「いつもの2~3割ぐらいのスポットしか打てません」……ある選手はこう嘆いた。
おまけに天気は曇り~晴れ。シトシト雨でも降れば希望が持てるが、緊張感のない好天はいい材料ではない。
スポーニングもほぼ終わり、魚たちは銘々に捕食活動に勤しもうとしているはずのこの季節に減水、晴れはサイヤク。
こうなると数少ないプロダクティヴエリアは、減水でも質のいいシャロー、またはチョイ沖のストラクチャー、カレントが効いている流入河川などに絞られる。
事実、このタフな状況で魚を持ち込んだチームは、そういったエリアから魚を絞り出してきた。
確かに、減水といえどもシャローがまったく釣れないわけではない。
今回、バサーの佐々木氏が久しぶりに取材に来てくれ、クルマで霞ケ浦を一周したが、玉造のリリーパッドでオカッパリアングラーがナイスサイズを獲っていた。
恐らくフロッグであろう。フロックではない。フロッグだ。
さらに選手が実際にシャローで魚を掛けているシーンも目撃した。玉造の石積、麻生のチョイ沖の鉄杭、萩原の石積・・・ いるところにはいるのである。
そんな感じで行われた第三戦だった。それでは入賞チームの釣りを振り返ってみよう。
優勝は柴崎智尋・小谷野慶太チーム。
若手コンビである。「イマカツのスキート・リース」といわれる柴崎選手は18歳でW.B.S.に参加し今年11年目。ノンボーターでの優勝は数回あるが、ボーターでは初優勝である。
もともとシャローマンである柴崎選手も減水には手を焼き、プラではイマイチ強気になれなかった。激浅エリアにガッツリ入っても、景気のいい答えは帰ってこなかった。
しかしそれで開き直ったのが正解。
下流域でエビを追いかけている魚をサイトで仕留め、2時間でリミットを達成してしまった。
いきなり6kg固めてしまったのである。その後はノーバイトだったというから、帰着までの時間は長かったことだろう。
「たまたま釣れました」と柴崎選手は謙遜するが、管理釣り場が原点の柴崎選手はサイトが滅法得意である。魚を見つけるのもウマイ。だからそういった魚に遠い距離からルアーを投げて食わせるのはお手のもの。柴崎選手に見つけられた時点で、その魚の運命は決まったようなものだ。
ネタはプロストレートのノーシンカーとマグクローのテキサス。この二つで乗り切った。
柴崎選手を助けたパートナーの小谷野選手は前回の3位に続いてのお立ち台。
しかも今度はテッペンに立った。実に「持っている」選手である。いずれアメリカで戦いたいという希望を持っているらしいが、じっくり成長していって欲しい。試合翌日、そして翌々日も霞ケ浦に残って練習に励んだ熱意は評価できる。
●柴崎チーム タックルデータ
Tackle1
ロッド:テムジン カレイド インスピラーレ スーパークーガー
リール:Revo MGX SHL
ライン:東レ/エクスレッド12lb
ルアー:プロストレート
リグ: ノーシンカー
Tackle2
ロッド:テムジン カレイド インスピラーレ スーパークーガー
リール:Revo MGX SHL
ライン:東レ/エクスレッド12lb
ルアー:マグクロー
リグ:ライトテキサス
パートナー 小谷野慶太
Tackle1
ロッド:フェイズ テンペスト
リール:ベイトキャスティングリール
ライン:バスザイル マジックハードR 14lb
ルアー:ピッチンスティック
リグ:ネイルリグ
Tackle2
ロッド:フェイズ ウォリアー
リール:ベイトキャスティングリール
ライン:バスザイル マジックハードR 12lb
ルアー:ジャックハンマー+ツインテールリンガー
Tackle3
ロッド:ファクト 66MST
リール:ベイトキャスティングリール
ライン:バスザイル マジックハードR 10lb
ルアー:ツインテールリンガー
リグ:スナッグレスネコ
浚渫が得意な草深選手だがスポーニング後に魚がそこまで出でいないことを察知。
しかしシャローは水がない。
それでも魚は岸側にいるだろうとプラをすれば激浅でも15バイトとれた。意を強くして試合に臨み、南岸をメインにガストネードとブレーバーのロングアプローチで、エビを捕食している個体を狙い撃ち。順調にリミットを確保してからは沖のヘビキャロに転ずるという、スムースなゲーム運びで6kg近いウェイトを持ち込んだ。
パートナーの佐藤選手も草深選手の指示をよく守り、ボウワーム6インチを駆使してウェイインフィッシュに貢献した。
草深選手はこの結果、年間レースでもトップに立った。
草深チーム タックルデータ
Tackle 1
ロッド:クロノス671MLB
リール:アルファスAIR
ライン:FCスナイパー8lb
ルアー:ガストネード70s
Tackle2
ロッド:スティーズ 651LFS
リール:イグニスTYPE R 2506H
ライン:PEエギ0.8号+シューター8lb.
ルアー:ブレーバー5.7 (テールカット)
リグ :ノーシンカーワッキー
パートナー 佐藤 優
Tackle1
ロッド:エバーグリーン カレイド TKDC-66ML
リール:タトゥーラ HLC 8.1L-TW
ライン:サンライン インビジブル 10lb
ルアー:エバーグリーン ボウワーム6
リグ:スナッグレスネコリグ
プラではレイク全域を回ったが、1エリアで1本というスローな雰囲気。
おまけに減水でシャローは捨てて、流入河川に狙いを定めた。
これが大正解で高比重スティックベイトのノーシンカーを葦やガマのポケットに送りこんでバイトを取っていった。4本獲ったところで本湖のシャローに移動。帰着30分前にパートナーと一本ずつ釣り、5kgオーバーのウェイトを確保した。
赤羽選手はSLPにセミオーダーしたリールを駆使、その投げやすさが気持ちいい釣りを実現してくれたと語っていた。
「次は水があるシャローで釣りたいです」…赤羽選手の言葉も理解できる。
赤羽チーム タックルデータ
Tackle1
ロッド:スティーズ フランカー
リール:スティーズ セミオーダーSV-TW 1012 7.1
ライン:スティーズ フロロ 14lb
ルアー:高比重 スティックワーム5
リグ :ノーシンカー
Tackle2
ロッド:ジリオン66MH
リール:スティーズ SV-TW 1012 XH
ライン:ブレイブモンスター 14lb
ルアー:高比重スティックワーム4
リグ :ノーシンカー
パートナー 阿部 寿徳
Tackle1
ロッド:スティーズ レーシングデザイン 68M/MLFB
リール:SS Air 8.1L
ライン:デフバスフロロ 12lb.
ルアー:ネコファット
リグ:ネコリグ バサーズワームシンカーTG 1/16
得意の北浦まで走り、最上流の矢板、ジャカゴなどに潜むポストの魚を狙った。
さすがにホームレイクでは外さない強さが目立った。北浦で釣り込んだ後は本湖の沖テトラで清水選手が爆発。チームプレーが冴えて入賞を果たした。
5位は桜川の中流域~上流域を攻めた石井賢一・加藤義明チーム。
トータル100歳のキャリアはダテではなく、カレントが効いた桜川に決め打ち。減水でも奥の奥にルアーをブチ込み、グッドサイズを確保していった。
ビッグフィッシュ賞はやはり桜川最上流で藤原勝巳・高木俊弥チームがモノにした1875gが獲得した。
こうして大減水でのた打ち回ったチームも少なくなかったが、上位チームのエリアチョイス、ルアーセレクトなどはサスガといえ、内容の濃い試合だった。
次は7月の北浦戦。そして8月の最終戦へと熱い戦いが続く。面白くなった来た。