フィナーレは悲喜交々。
2017 W.B.S.プロトーナメント最終戦レポート
いつも語り尽せぬ話題を提供してくれる最終戦。
あるものは今年の掉尾を飾るべく勝利を目指し、あるものはA.O.Y.、P.O.Y.の座を追い求め、そしてあるものはクラシック権だけは確保したいと、それぞれの思いを胸に秘めて戦いに臨んだ。
今年のフィナーレが8月と早まったため、例年とは違ったドラマが繰り広げられたようだが、勝負の結果は常に非情。晩夏の土浦新港には悲喜交々が錯綜した。
今年、新体制に生まれ変わったW.B.S.も無事に最終戦に漕ぎつけた。
これまで、みなさんのご協力もあって、成功裏に進んできたといえる。
ウェイインステージをリニューアルして、ウェイインスタイルを刷新し、ゲストを招いたり、さまざまな改革案を実行してきた。
この先、オープン戦やクラシックがあるが、とりあえずはレギュラートーナメントの最終戦に漕ぎつけた。目出度いことである。
関係各位の努力に対して、感謝したいと思う。実際に運営するのは傍で見ているよりは大変だからだ。
さて、今年の最終戦は8月にスケジューリングされ、各チームの戦い方は例年とやや違っていたようだ。
立秋は過ぎたとはいえ、8月はまだまだ盛夏。しかし、水中では秋の訪れは早い。魚は本能的にそれを感じ取っている。つまり、秋の魚と夏の魚を釣り分ける必要があったのである。
●最終戦を支配したファクター その1
夏ともいえるが秋ともいえる、そんな微妙な時期に行われた最終戦。
闘う前から難しさがわかる。いつもの秋の最終戦とはちょっと違ったからだ。
とくにこの夏の天候不順は異常だった。雨続きの8月。
カンカン照りよりは過ごしやすいが、夏はやっぱり暑くないといけない。
試合当日は幸い、二日間とも雨には祟られなかったが、水戸周辺ではゲリラ豪雨が発生。川筋に大きな影響を及ぼした。
桜川が濁流と化したのである。
行ったことはないがガンジス川のようだった。これには多くのチームが愕然とした。試合前には釣れていたから尚更だ。
第一フライトを引いたチームがカッ飛んで行っても、「ズガーン! 何コレ?」である。これで終わったチームも少なくなかった。最終戦最大の誤算である。
●最終戦を支配したファクター その2
もう一つのファクターが風。
両日とも朝こそ穏やかだったが、次第に北東が吹き始め、
エントリーを不可能にするほどではないが、躊躇させる強さだった。
しかし、この風がオフショアーの釣りに味方したことも確かである。
禍福はあざなえる縄のごとし。あるチームにはマイナスでも、
別のチームにはプラスに変るものである。
●最終戦を支配したファクター その3
そして最終戦に臨む選手たちの前に立ちはだかった、もう一つのファクターがある。
それは
↓
↓
↓
プレッシャー。
様々なタイトルが決定する試合だけに、
いつもとは違った精神状態が釣りを狂わせる。
人間「勝てる」と思った時が一番怖い。
A.O.Y.目前。
クラシック当落線上…
最終戦はそういった選手たちのメンタルが問われる大一番なのである。
そんな状況で行われた最終戦。そんな状況で行われた最終戦。意外に土浦周辺を攻めたチームが多かった。
桜川を早々に諦めたチームがバックアップに指名したのか、二日間とも多くのチームを擁し、結果も与えてくれた。
あとはスノヤハラや東浦、本湖東岸、南岸と、各チームは霞ケ浦全域に分布した。夏と秋が混在したゲームだったので、とりとめのない分散ぶりだった。
そんな中、唯一フルリミットを達成して優勝したのは平川皓也・保延宏行チーム。
「ここ」というエリアを決めず、霞ケ浦全域を回り、浅いところ深いところ、スポットに応じて釣りを変えていった。
といってもメインはテキサスリグ一本。それを丁寧に丁寧に撃って行った。
基本はロングアプローチ。
そして底質に応じてシンカーの種類、重さを変えて、フォールスピードを変えたり、根掛かりを避けたりした。逆に、入れたいスポットでは重めのシンカーを使い大胆にブチこんだ。
メインタックルは一本だったが、面倒くさがらずリグり直した。
平川選手は第4戦で、場所移動を躊躇してタイミングを逃した苦い経験を持っている。
それがよっぽど悔しかったのか、今回は移動を躊躇しないぞと心に決め、すぐにカッ飛んで移動できない北利根川を除外、常にスクランブルできる体制を整えた。
だが、いったんエレキを降ろせば移動を考えずに集中。
「特別なことをしていない」というが、基本を守り抜いて少ないバイトを獲っていった。この戦いぶりにはパートナーの保延選手も脱帽。
「釣っているエリアは普通で、釣りも特別なことはしていない。でも僕には釣れない」と、平川マジックに酔い痴れていた。
二日間、霞ケ浦全域を回ったというが、魚を獲ったエリアはそれぞれ異なり、天候や風などの状況に応じて、臨機応変に立ち回ったことが伺える。
こうして、今回も飄々として優勝をかっさらっていった平川・保延チーム。平川選手は初戦と最終戦に勝つという離れ業を見せつけた。
タックルデータ
平川晧也
Tackle1
Rod: DAIWA タトゥーラ610MXB
REEL: DAIWA タトゥーラSV TW 7.3R
LINE: DAIWA モンスターブレイブZ 18lb
LURE: ウルトラバイブ スピードクローRIG: テキサスリグ5g
Tackle2
Rod: DAIWA スティーズ 701 MH/HFB ハスラー
REEL: DAIWA タトゥーラSV TW 7.3R
LINE: DAIWA モンスターブレイブZ 20lb
LURE: ウルトラバイブ スピードクローRIG: テキサスリグ10g
Tackle3
Rod: DAIWA エアエッジ 661MHREEL: DAIWA タトゥーラSV TW 7.3R
LINE: DAIWA モンスターブレイブZ 18lb
LURE: ヤマセンコー 4RIG: ノーシンカー
保延宏行
Tackle1
Rod: DAIWA BLACK LABEL+6101MHFB
REEL: DAIWA アルファスTYPE R
LINE: サンライン BMS 14lb
LURE: ウルトラバイブ スピードクローRIG: テキサスリグ9g
Tackle2
Rod: G-loomis IMX 783C
REEL: DAIWA PX68
LINE: サンライン BMS 12lb
LURE: ヤマセンコー 4RIG: ノーシンカー
準優勝は大藪厳太郎・冨村貴明チーム。
プリプラでは二人とも絶好調、推定8kgオーバーを確保してW.B.S.記録も夢ではなかったが、前プラでそのプランは崩壊。
あるレンジをある釣り方で攻めるという可能性を持っていたが、初日は噛み合わず、フォールターンオーバーのような状況でバイトも遠く、喰って来ても狙いのサイズではない。
パートナーの冨村選手がバズで仕留めた一本などが効いたが初日は4本3745gと普通の人。
だが二日目は立て直し、風が吹いたらシャローのハードボトム、風がなければ浚渫と決め、二人とキャロライナリグメインで、攻めとおした。
11時過ぎて冨村選手の4連続ヒットなどもあり、終ってみれば二日目のトップウェイト。
大藪選手は一瞬、2017年2勝、3タコという大記録達成か? という場面もあったが、準優勝に終わった。
この落差の原因は? との問いに「手堅く行ってデコる。バクチを打って釣れる。そんなシーズンでした」と語っていた。
タックルデータ
大藪厳太郎
Tackle1
Rod: インスピラーレ スーパースタリオン GT
REEL: ベイトキャスティングリール
LINE: 14lb
LURE: エリートクロー
RIG: ヘビーキャロライナリグ
富村貴明
Tackle1
Rod: 71H
REEL: ベイトキャスティングリール
LINE: FCスナイパー16lb リーダー:シューター14lb
LURE: O.S.Pドライブビーバー
RIG: ヘビーキャロライナリグ 18g
Tackle2
Rod: 610MH
REEL: ベイトキャスティングリール
LINE: マシンガンキャスト16lb
LURE: OSP 02ビート
RIG: バズベイト
3位は川口信明・君和田知之チーム。
直前のK-1トーナメントでヒントを掴んだ川口選手、朝や曇天下では秋の場所で秋の釣り、陽が出れば夏の場所で夏の釣りとプランを立案。
霞ケ浦全域を回ろうと思ったが、初日は風のせいで土浦周辺の2カ所にとどまった。
それでもウッド系のカバーをメインに撃ちモノで攻め、5905gという出色のウェイトをマーク。
これは「行ったか」と期待させたが、2日目は「魚が変わったか?」と驚かせるほどサイズダウン。
それでも釣りを変えずにやり切り、帰着直前にキロアップが来て3位入賞。
パートナーの君和田選手のネコリグ・ゼロテンションシェイクも冴えて、貢献度大だった。
川口信明
Tackle1
Rod: ヴァガボント アクションロッド
REEL: ベイトキャスティングリール
LINE: マシンガンキャスト25lb
LURE: クリーチャーベイトRIG: テキサスリグ
Tackle2
Rod: グラスロッド
REEL: DAIWA TD-X
LINE: サンライン マシンガンキャスト16lb
LURE: ドライブビーバーRIG: ミブロ(チャターベイト)
君和田知之
Tackle1
Rod: テイルウォーク67ML/SL
REEL: DAIWA PXLINE: サンライン BMS AZAYAKA10lb
LURE: GETNET ジャスタクローラー4.7in 他RIG: 1.8gネコリグ
Tackle2Rod: キラービート63lL
REEL: DAIWA イージス2504
LINE: サンライン BMS AZAYAKA4lb
LURE: ストレートワームRIG: ジグヘッドワッキー
4位は土浦周辺の川でスコアをまとめた安藤毅・田口晃チーム。
初日はスローだったが、横の動きに反応がいいと察知してからは絶好調。
バグアンツのテキサス、チェリーリグで二日目は12本ゲット。
「初日のどん底、二日目の絶好調と、喜怒哀楽が激しい試合でした」と安藤選手。田口選手の魚もウェイトに大きく貢献した。
5位は北利根、本湖浚渫を効率よく回った平本直仁・鯉川健一チーム。
平本選手は年間を見据えてのゲーム。
キャリラバと野良ネズミを駆使して鬼のように追いかけたが、一歩及ばなかった。
しかし、それでも終わってみれば年間2位! その結果は誇るに足るものだろう。パートナーの鯉川選手も何気に頼りになる存在だった。
なおビッグフィッシュ賞は初日が土浦のシャローで1670gを獲った赤羽修弥・山田治チームが獲得。
ネタは高比重スティックベイトのノーシンカー。二日目はやはり土浦周辺のシャローでドットクローラーのノーシンカーをステイさせ1810gを獲った盛隆弘・内海昭チームが獲得した。
19日 BIG FISH 赤羽修弥
Rod: DAIWA ジリオン 661MXB
REEL: DAIWA スティーズ1012 SV TW
LINE: DAIWA スティーズフロロ 13lb
LURE: 高比重スティックベイトRIG: ノーシンカー
20日 BIG FISH盛隆弘
Rod:Megabass LEVANTE F5-610C
REEL: DAIWA
LINE: サンラインFCスナイパー BMS AZAYAKA 12lb
LURE: Megabass Dot Clawler 4.8 in RIG: ノーシンカー
なお、注目のA.O.Y.争いだが、今年も大変なドラマが起こった。
周囲は2位に3kg以上の差をつけていた草深幸範選手の楽勝ムードと見ていたが、初日、4位で最終戦を迎えた蛯原英夫選手が6015gというビッグウェイトを釣って来て一挙に暫定2位に大浮上!
一方、草深選手は4本3275g。蛯原選手との差を1245gにまで詰められてしまったのである。
さらに平本選手との差もわずか2160g。これはもう、差はあってないもの。
すべては最終日に決まるという、興奮してもしきれない成り行きになったのである。
勢いでは蛯原選手が圧倒的に優位に立っていたが、神は残酷なもの。
なんと、蛯原選手はボートトラブルに見舞われ、思うようにゲームを進めることが出来ず失速。
平本選手はそこそこの数字を作って来て一瞬逆転かと思わせたが、草深選手は4055gを絞り出してきて、なんとか逃げ切った。
草深選手にとって、この最終日は気が遠くなるほど長い一日だったに違いない。
だが、苦しみ抜いてタイトルをもぎ取った実績は、同プロの実力を間違いなく一段高めることだろう。
このように、草深選手、蛯原選手、平本選手、赤羽選手などが懸命にA.O.Y.を目指して戦った2017年最終戦は、それぞれに悲喜交々。実に見どころの豊富な試合だった。
近日中に、そのドラマをこのページで詳しく紹介させていただくつもりだ。
そしてBプロのチャンピオン、P.O.Y.は内海昭選手が獲得した。
こうして無事に2017年のレギュラートーナメントは終了した。これからオープン戦、クラシックとビッグゲームが続くが、ここまでご協賛いただいたメーカー様、運営に頑張っていただいた関係者には、このスペースを借りて御礼申し上げたい。
皆様、お疲れまでした。