ゴーワン、最後に笑う!
自力で抜け出た2位の呪縛
2018 W.B.S.カスミプロクラシックレポート
10月は微妙な季節である。
気温が20℃オーバーで風がなければ半袖でOK。
スポーツを楽しむにはもっとも快適な環境である。
それゆえ、この時期は野球やゴルフなどのビッグイベントが行われる。
バスフィッシングも例外ではない。
毎年、一年の総決算的な試合が開催される。
今年はおかげさまで二日間とも晴天に恵まれた。
実に気持ちがいい秋晴れであった。
しかし……
それは陸の上での話。
水中では冬が不気味に忍び寄っていたのである。
土浦新港では穏やかな湖面も、崎浜辺りを過ぎると、かなりな爆風が吹いており、関西風のいい方をすれば「まあまあ吹きよるな」という荒れ方だった。
そう10月20、21日の霞ヶ浦、北浦はすっかり冬だったのである。
ちなみに、多くの雑誌社が「霞ケ浦水系」などと表現しているが、そんなものはどこにもない。
「水系」というからには「利根川水系」である。
まっ、そんなことはともかく、
冬の到来を感じていたのは人間よりも魚の方が早かった。
一言でいえば渋いのである。
日に日に水温が下がりつつあり、それにともなって活性は激低下したのである。
これでは翌週に控えたバサー・オルスタークラシックも厳しいと言わざるを得ない。
ということは利根川がクローズアップされるのか・・・
さて、そんな感じの20、21日のクラシックデーだけに、選手も皆、のた打ち回った。
参加18名中、初日のリミットメイクはゼロ。
ノーフィッシュも4名、1尾が5名、2尾が5名、3尾が2名、4尾が2名という悲惨な状況だった。
二日目はやや持ち直したが、それでも
リミットメイクが2名、ノーフィッシュは6名と増えた。
1尾が4名、2尾が4名、3尾が2名、という結果だった。
二日間トータルでリミットメイクが二人だけという事態は、かなりなものである。
とはいえ、強烈に寒かった昨年のクラシックも同じようにロースコアだった。
そんな過酷なゲームを制したのは
初出場以来21回連続出場記録を持つ蛯原英夫選手。
3回目の栄冠である。
今年はワイルドカードに印象的なゲームで勝ったものの、A.O.Y.レース、オープンともに2位。
以前から「もう2位はいらない」と常々いっていただけに、心中穏やかではなかっただろう。
だが、蛯原選手は自力で2位の呪縛から抜け出た。
苦しい中での勝利だっただけに、達成感も大きなものがあったと思われる。
とはいえ、他の選手と同じように、楽なゲームではなかった。
プラでもまったく釣れない。
「難しい」……それが第一印象。
必死に釣りをしても、せいぜい一日2尾。
ノーミスでもその程度だから、かなり釣れないといっていい。
だが、そんなタフコンディションが蛯原選手に明確な戦略を与えたのも間違いない。
それは……自分が信じたことをやり抜くこと。
一切の迷いを捨てて、ブレずに自分の釣りを貫き通すことだ。
釣れなくても、あれこれ迷わずリグを打ち続ける。
それはある意味自分との戦いだが、やり切らないと勝機はないとハラを括ったのである。
具体的にはカバーを丁寧に撃つこと。
魚が少ないのでミスは絶対に許されない。
同じストレッチを何度も何度も延々と打つのである。
その地道な行為が、初日4尾3815g、二日目3尾2715gという魚をもたらした。
メインに撃ったのはバスエネミー3inの3.5gテキサスリグだが、ダブルモーションのフリーリグ、ツインテールリンガーのネコリグなどもエリアに応じて投入した。
バイトはほとんど「ン?」とい微かな違和感だけだったというが、水温低下による甘噛みで、バイトを逃したこともあったようだ。だから二日目、土浦新港に帰る時にはやや心残りもあったようだ。
だが、迷わず丁寧にリグを撃ち続ける釣りに徹した結果、優勝という栄冠が訪れた。
優勝が決まる瞬間は「また2位?」とハラハラしたようだが、今回は堂々の勝利だった。
釣果は二日で7尾。
釣りをしている時間から考えたら、気が遠くなるような渋さだ。
だが、それがバストーナメント。
厳しい中での戦い方の見本のようなものである。
自力で2位の呪縛から抜け出した蛯原選手の今後が期待される。
蛯原選手タックルデータ
Tackle 1
Rod:ヘラクレス エアリーフリップ75H
Reel:ベイトリール
Line:マジックハードR16
Lure:ダブルモーション2.8インチ(サファイアクロー)
RIG:フリーリグ5グラム
Tackle 2
Rod:ヘラクレス エアレギウス66ML LTS
Reel:ベイトリール
Line:バスザイルマジックハードR10ポンド
Lure:ツインテールリンガー(グリパンBL)
RIG:ネコリグ1/32オンス
Tackle 3
Rod:ヘラクレス ファクト67MHST
Reel:ベイトリール
Line:バスザイルマジックハードR14ポンド
Lure:バスエネミー3.5インチ(シナモン)
RIG:テキサスリグ3.5グラム
準優勝は初日に1560gでビッグフィッシュ賞を獲得した今井新選手。
初日はその1尾だけだったが、二日目に4790gというトップウェイトを持ち込んで2位に滑り込んだ。
本湖下流や北利根川をメインにO.S.Pタッガー、ブレードジグを駆使して順調にウェイトを伸ばしていった。
この激渋の中での5尾4790gは評価されよう。
今井新タックルデータ
Tackle1
Rod:エバーグリーンヘラクレスfact HFAC-67MHST
Reel:ベイトリール
Line:サンラインBMS 12lb
Lure:OSPドライブシャッド3,5インチ(ゴールデンシャイナー)
RIG:ライトテキサス
Tackle2
Rod:エバーグリーンヘラクレスfact HFAC-67MHST
Reel:ベイトリール
Line:サンラインBMS14ポンド
Lure:ジグ05タッガー4g(ダークシナモンブルーフレーク)+ドライブスティック3インチ(ダークシナモン・ブルー&ペッパー W027)
RIG:スモラバ
Tackle3
Rod:ダイワスティーズ661MHRB-XTQ
Reel:ダイワ タトゥーラ SV TW 7.3L
Lure:O.S.P BLADE JIG SPEC2(ブラック BJ30)
Line:サンラインシューター・FC スナイパー インビジブル14ポンド
RIG:チャターベイト
三位は初日3885gでトップだった初出場の弱冠22歳、江尻悠真選手。
二日間とも北浦山田ワンド、常陸利根川というルートを回り、ワイルドハンチ、スキルフルなどのクランクベイト、スリムヤマセンコーのネコリグなどを投入して戦ったが、二日目のサイズダウンが影響して3位に終わった。
クラシック前は緊張して夜も眠れなかったようだが、この経験がいずれ花開くだろう。
江尻悠真タックルデータ
Tackle 1
Rod:ism infinite blade IBC-610MMLGT
Reel:Daiwa アルファスフィネスカスタム
Line:東レ エクスレッド13lb
Lure:スコブルミッド ワイルドハンチ
Tackle 2
Rod:ism infinite blade IBC-66LST
Reel:ベイトリール
Line:フロロ8lb
Lure:ゲーリー 5インチスリムヤマセンコー1/16oz ネコリグ
Tackle 3
Rod:ism infinite blade IBS-61LST
Reel:スピニングリール
Line:フロロ4lb
Lure:ストレートワーム、トルキーストレート3/64ozネコリグ
二日目のビッグフィッシュは、西の洲の浚渫跡でキャリラバ+ハリーシュリンプ4inを駆使して草深幸範選手が獲った1745gが獲得した。
草深選手タックルデータ
Tackle 1
Rod:エアエッジ701MHB-ST
Reel:ジリオンSVTW 1016XXHL
Line:シューター16lb
Lure:キャリラバ3/8oz+ハリーシュリンプ4
こうして、激動の2018W.B.S.クラシックは終わった。
初日の夜にはいつものように楽しいパーティーが行われ、選手一同は一瞬、釣れない苦しさを忘れたようだ。
来年も初戦からA.O.Y.、クラシックを目指しての戦いが始まるが、とりあえずは今年一年、お疲れ様でしたと申し上げたい。
そしてスポンサー様、頑張ってくれたスタッフ一同、関係者の皆様に感謝する次第です。
それでは・・・See you!